生き方を大切に思う 丁寧に寛大に
2021年 05月 10日
そんな未来へのコミットをし
【幸福は伝わる】
岸見一郎氏の心に響く言葉より…
哲学者の三木清は、「歌わぬ詩人というものは真の詩人でない如く、単に内面的であるというような幸福は真の幸福ではないであろう」といっています(「人生論ノート」)。
幸福は必ず外に表されるものです。
その幸福は他者に伝わります。
幸福な人と一緒にていて、幸福になれないことはありません。
どのように幸福が外に表されるのか。
三木は「機嫌がよいこと、丁寧なこと、親切なこと、寛大なこと」をその例にあげています。
まず、「機嫌がよいこと」は簡単なことではありません。
しかし、常に上機嫌でなくても、気分が安定している人と一緒にいるとたしかに自分の気持ちも落ち着いてきます。
余計な気を使わなくて済むのはありがたいです。
次に「丁寧なこと」。
何かをお願いされても対応がおざなりになることはあります。
忙しいことなどを理由に求められたことをできないとは思わないで、しっかりと対応できることが、丁寧であるという意味です。
さらに、「親切なこと」とは、援助を求められたら、可能な限り、力になることです。
何でも力になれるわけではありませんが、時に自分のことを後回しにしても、心に余裕があれば、援助を求めてきた人の力になれることを幸福に感じられるのです。
三木が最後にあげている「寛大なこと」とは、考えの違った人を受け入れることです。
介護の場面でも、親の考えとぶつかることはあります。
それでも、親の考えを理解する、少なくとも理解する姿勢を示すことは大切です。
理解することは賛成することではありませんから、違う考えを寛容に受け入れてみましょう。
親の立場からいえば、子どもが看病や介護のために幸福を犠牲にしてまで自分に尽くしていると見えるのは、嬉しいことではありません。
親のためにと思い献身的な介護をしても、介護をする子どもが不幸であれば、かえって親を不幸にしていることもあるのです。
子どもの立場からいえば、親に苦しむことなく、できるだけ安楽に過ごしてほしいと思います。
そのために自分が親の力になれることを喜びに、そして、それを幸福と感じられれば、そのような子どもの思いは親に伝わり、親は子どもの世話を負担とは思わないでしょう。
三木は次のようにいっています。
「我々は我々の愛する者に対して、自分が幸福であることよりなお以上の善いことを成し得るであろうか」
『「今、ここ」にある幸福』清流出版
本文の中にこんな素敵な言葉がある。
『実に人生そのものが旅であり漂泊です。
ただ目的地に着くことだけを問題にし、途中を味わうことができなければ、旅を楽しむことはできません。
実際に旅に出なくても、日常の生活の中で時間に縛られずに悠々と生きられたら、これからの人生はずいぶんと違ったものになるでしょう。』
「幸福」とは探しにいくものではなく、「今、ここにある幸福に気づくこと」
遠くまで幸せの花を探しにいくのではなく、道端に咲く花の美しさに気づくこと。
ほんの小さな幸せに気づくこと。
そして、それに感謝すること。
すると、その人からは、幸せが、にじみ出てくる。
そこはとなく、花の香りが漂ってくる。
それを「花は香り、人は人柄」という。
人柄という徳の香りだ。
その徳の香りが、「機嫌がよいこと、丁寧なこと、親切なこと、寛大なこと」。
「機嫌がいい」とは、他の人がどうあれ、自分が機嫌がいいということ。
なぜなら、自分の機嫌は自分で取れるからだ。
反対に、不機嫌な人は他人に左右される。
そして、人のせいで自分の機嫌が悪くなると思っている。
安岡正篤師は、「徳とは無類の明るさのことである」と言われた。
「丁寧なこと」とは、丁寧に生きるということ。
挨拶や、ハイと言う返事、言葉遣い等、礼儀正しく生きるということでもある。
自分が幸福で満ち足りていれば、誰に対しても丁寧にできる。
自分が荒れていれば、荒れた言葉を使い、いい加減で無礼な態度で接する。
「親切なこと」とは、自分の心が愛で満たされていれば、自然と人にも親切にできる。
自分が不幸なら、人のことまで気がまわらず、自分のことで精一杯だ。
ましてや、人に親切なことなどできない。
「寛大なこと」とは、人を許すことができること。
不幸な人は、人も許すこともできないのと同時に、自分も許すことができない。
自分のことを嫌いだったり、自信がなかったり、完璧主義だったり、と言う、いわゆる「自己肯定感」が低い。
幸せな人は大らかで、余裕がある。
「不機嫌は伝染する」という言葉があるが、「幸福もまた伝染する」。
「幸せな人」、つまり、機嫌のいい人、丁寧な人、親切な人、寛大な人と一緒にいると自分も幸せになる。
「幸福は伝わる」
今、ここにある幸福に気づける人でありたい。
上記の【幸福は伝わる】については人の心に灯をともすより引用しています。