念とは「今」を大事にする「心」ということ 念入りにやればリスクも乗り越えられる

ー杉浦佳浩

念とは「今」を大事にする「心」ということ 念入りにやればリスクも乗り越えられる


2021年 07月 12日

【今週の自戒】
念とは「今」を大事にする「心」ということ 念入りにやればリスクも乗り越えられる

先日ある経営者さんと面談、
事業をどう進めるか?
そんな相談をお聞きする機会で、

通り一遍の深みも何もない
その業界の人が普通に
やっている、やりそうなことに
終始するお話でした。

まさに念が入っていなかった。
今を大事にする心
今のご自分の置かれている立場
周囲の状況に気づいていなかった。

踏んではいけないリスク
踏み込むべきリスク
そこもまだら模様で今一つ
ピント来ていない感じでした。

挑戦しなければいけない領域には
リスクはつきもの、そこを
ファーストペンギンになれば
ブルーオーシャンが待っている。

念入りに、丁寧にそしてチャレンジングに。
変化に柔軟に、
リスクに覚悟を持って向かいたい。

今週もよろしくお願い申し上げます。

【念を入れて生きるとは】

高野山真言宗功徳院住職、松島龍戒(りゅうかい)氏の心に響く言葉より…

ある日、お釈迦さまとその弟子たちが訪れたのは、多くの人がバラモン教を熱心に崇拝している村でした。
この村の農夫パーラドヴァージャは、来る日も来る日も畑仕事に明け暮れています。
今日も汗水垂らして畑仕事をしているところへ、お釈迦さまとその弟子たちが托鉢にやってきました。
「お、あれはお釈迦さまの一行だな。自分たちは働きもせず、ああやって、ただ托鉢をしているだけでその日の食べ物にありつけるんだから、まったくいい気なもんだ」

彼は、自分たちが朝から晩まで畑仕事をしていても、生活が豊かにならないことをいつも不満に思っていました。
「お釈迦さまに皮肉のひとつも言ってやりたいよ」
パーラドヴァージャは畑を通りかかったお釈迦さまを呼び止めました。

「あんたたちはこの村に托鉢に来たんだろう。
この村の人はみんな朝から晩まで畑を耕して、ようやくその日のご飯にありついているんだ。
あんたたちも少しは畑を耕したり、何か仕事をしたりして食べ物を得たらどうなんだ」

少し間を置いてお釈迦さまは、口を開きました。
「では、あなたの仕事にたとえてお答えしましょうか」

「私たちにとっては、信仰を持ち続けることが種まきなのです。
そして、その種がよく育つよう、厳しい修行に励み、知恵や反省のこころ、清らかで落ち着いたこころを持ち続けているのです。
それだけではありません。
言葉と行い、食事をつつしみ、真実を守り続けて日々過ごしているのです。
これらはすべて私たちにとっての耕作そのものなのです」

「そ、そんなのはへりつくだ!」
声を荒げるパーラドヴァージャに、続けて語りかけます。

「もしあなたが、自分の畑仕事に大きな価値と役割を感じているのであれば、私たちの仕事も同じように感じていただけるでしょう。
でもあなたが、自分の畑仕事をつらいと思っているのであれば、私たちの仕事もきっとつらいものに見えるでしょうね」

返す言葉に窮しているパーラドヴァージャに、お釈迦さまは、こう諭しました。
「あなたが手に持っている鍬をごらんなさい。
持ち手の柄の部分ひとつとっても、その木を植える人、
木を切り出す人、加工する人、さまざまな人がかかわって作られているのではありませんか。
そしてあなたはそれを手にして、畑を耕すという仕事ができているのではありませんか。
仕事に誇りを持つことはよいことです。
しかし、自分の仕事のまわりや役割があってこそ、自分の仕事ができることを忘れてはなりませんよ」

『嫌なことがスーッと消える ほとけさまの話』徳間書店

本書の中にこんな解説があった。

『すべてが思い通りに来たと言う人は、まずいないでしょう。
置かれた境遇に不満や愚痴をこぼしていませんか。
たとえば、商品開発やデザインの部署に就きたかったのに、配属先は別の部署になった…。
あるいは、第一志望ではない会社に就職せざるを得なかった…。
「隣の芝生は青く見える」ものです。
この物語は、世の中にはさまざまな役割(仕事)があり、その価値に優劣はないことを教えてくれます。』

自分の今の立場や境遇に幸せを感じている人は、他人との比較はしない。
幸せを感じ、それに感謝しているからだ。
お釈迦さまのいう「そこに価値と役割を感じている」ということ。

しかし、不平や不満がある人は、他人と比較をする。
あの人に比べて自分は不幸だ、自分は損をしている、と。

小林正観さんは、それを「き・く・あ」の実践と言っている。
「き」とは、競わないこと。
「く」とは、比べないこと。
「あ」とは、争わないこと。

そのために必要なのが、「念を入れて生きる」ことだという。
「念」という字は、「今」と「心」からできている。
「今」を大事にする「心」ということだ。
目の前の人を大事にし、目の前のことや仕事一つひとつを大事にする生き方。
つまり、今、この瞬間を大事にすること。

すると、他のことが気にならなくなる。
念を入れて生きていきたい。

上記の【念を入れて生きるとは】については人の心に灯をともすより引用しています。

写真の【リスク】は月刊「PHP」2021年7月号 裏表紙の言葉です。
全文を引用し、以下に掲載いたします。

仕事をする上で、よく聞く言葉に”リスク”がある。何をするにもリスクが想定され、一様に「さけよう。なくそう」という。ところがその思いが強すぎると、変化こそリスクと信じ込み、時代の変化に対応できない例も多いという。
そもそもリスクは本当にさけることが最善なのだろうか。リスクにも種類があり、確かに絶対にさけるべきものもある。しかし、未来のためには、挑戦しなければならないリスク、目指す目的達成のためには、覚悟を定めて受けて立つべきリスクもあるのではないだろうか。
世の中は生成発展するもの、おのずと新しい常識ややり方が次々に生まれてくる。それを素直に捉えて、みずから変化を求めることが必要であろう。それすら恐れていては真の発展は望めまい。リスクは忌み嫌うだけが処し方ではないはずである。
リスクはいつだってそばにある。リスクを避けんがための慎重さが逆に問題解決を逡巡させ、変えるべきことを変えられない事態が実はより深刻なリスクを生んでいる。その難しさを肝に銘じたい。