第139回ご縁結びのコーナー株式会社goenz 代表取締役社長 須藤徹治さん 〜「人生を変える『ご縁』を偶然で終わらせず、科学(サイエンス)の力で再現可能な仕組みへ」〜
2026年 08月 08日
【はじめに】
今回のインタビューゲストは、株式会社goenz(ゴエンズ)の代表取締役社長を務める須藤徹治さんです。実は、須藤さんのファーストキャリアである三井住友海上火災保険時代、同じ支店で彼の先輩だったのが、私、杉浦になります。私が会社員時代の最後のぶらぶら社員といいますか、20,000人の会社でたった1人固定給フリーランスを役目にしてもらっていた際に、1番私に連絡を取ってくれていたのが今回の須藤さんになります。本業である保険業務以外のお客様の本業支援や事業シナジーのご紹介などを一緒に走り回っていたのが懐かしいですね。須藤さん、当時から現場で泥臭く、しかし非常にロジカルに物事を捉えていた彼が、数々の大舞台や急成長スタートアップを経て独立し、独自の思想で「カスタマーサクセス」の仕組みを世に広げています。彼の歩んできたキャリアの変遷や事業への想い、そしてその根底にある学生時代の原体験について、じっくりとお話を伺いました。

【最近の須藤さん】
■ 幼少期から学生時代:自立心の芽生えと、合意形成力の礎
須藤さんは長崎県佐世保市で、地元でも歴史のある焼き鳥屋を営む家庭に生まれ育ちました 。この焼き鳥屋さん、現在は休業中、私もコロナ期間中に食べに行かせてもらいました。独特の甘さだったタレが懐かしいです。
2021年5月に須藤さんの故郷を訪ねました。その際のブログはこちらから。
両親は夕方から夜遅くまでお店の経営で多忙を極めていたため、必然的に祖父母と共に過ごす時間が長い環境でした 。このサラリーマンとは異なる家庭環境が、須藤さんの中に「仕事とは何かを犠牲にしながらも愚直に向き合うものだ」という確固たる仕事観を、無意識のうちに育むことになります 。
幼少期の須藤さんに大きな影響を与えたのが、祖父母の教育でした 。毎日日記を書き続けるよう厳しく指導した祖母と、水道局の技術者であり木工工作を一緒に黙々と楽しんでくれた祖父 。手先を動かし、自らの体験を言語化し続けたこの習慣が、後の高校・大学受験においても国語の勉強をせずとも高い点数が取れるほどの「高い言語化能力」や「構造的把握能力」のベースを築き上げました 。
元々は引っ込み思案な性格でしたが、小学校での図画工作やソフトボール、生徒会活動を通じて次第に人前で話す自信を育んでいきます 。中学校のソフトテニス部では顧問が不在だった環境の中、自分たちで練習メニューを組み立て、目標に向けて自律的に取り組む仕組みを経験します 。強豪校の選手をその学校に出向いて熱心に偵察・研究し、「できる人の真似をする、自ら計画を立てて運営する」という、現在のビジネスに通じる自立心の原点はこの時期にありました 。
その後、「より広い世界を見たい、情報格差を超えて自由になりたい」という強い憧れから地元の進学校ではなく、遠方の佐世保西高校を選んで理系コースへと進学 。しかし、大学受験の直前になり、世の中で広く活躍する人々を見渡した結果、「より広く世の中一般を司る法律を学びたい」と、センター試験後に理系から文系(法学部)へ急遽進路を転換し、見事合格を果たします 。
大学時代は、憲法ゼミのゼミ長に就任 。思想や主張が激しくぶつかり合う多様なメンバー20名が揃う中、須藤さんは「メンバーそれぞれがなぜその思考に至るのか、どういう動機、追い立ちやバックボーンがあるのか」を一対一で徹底的にヒアリングし、調整役に奔走しました 。この時に培われた「相手の核心にある思いを聴く姿勢」と「深いレベルでの合意形成力」は、後の彼のキャリアにおいて強力な武器となっていきます 。

【京大へ連れて行ってもらいました】
■ 大企業からスタートアップ、そしてSalesforceへ:掴み取った「現場主義」と「事実主義」
大学在学中に法律事務所でのパラリーガル勤務などを経て、新卒で日本の伝統的な大企業である三井住友海上に入社 。優秀な人材が集まるエリート部門である「商品部(火災火災業務)」へ配属されますが、難易度の高い業務や、入社2年目に直面した保険金不払い問題への対応など、漫画の世界のように鳴り止まない電話応対の日々に大きな挫折と苦労を経験します 。
その後、自身で志願をして転勤となった大阪北支店(営業現場)での経験が、須藤さんの意識を大きく変えました 。それまで社内の上司や役員ばかりに向いていた視線が、初めて「代理店さん」や「その先のお客様」へと向くようになります 。大企業の理屈が通用しない現場を経験したことで、相手が本当に受け取れる表現を模索し、お客様に徹底的に向き合った結果、初年度の9月以降は個人予算を一度も割ることなく達成し続ける急成長を遂げました 。
その後、お子さんの聴覚障害(難聴)が判明し、転勤のない働き方を求めて退職を決意 。コンサルティング会社を経て、かつて大阪北支店で先輩だった私(杉浦)とのご縁から、ゼロイチで急成長を遂げていたスタートアップである株式会社スタディストへと転職します 。
スタディストでの5年半は、須藤さんにとって「最も熱狂し、楽しかった会社員人生」となりました 。関西拠点の立ち上げ、全国の地方銀行とのアライアンス構築、全国を飛び回る新規事業開拓など、何もないベンチャー環境から市場の階段を自らの手で登っていくお祭りのような熱狂感の中で、我流ながら海外の米国サースの成功事例を翻訳し、独自の「カスタマーサクセス(CS)」の基盤と仕組みを創り上げていきました 。

【少しほろ酔い加減で】
その後、カスタマーサクセスの総本山であるSalesforce(セールスフォース・ジャパン)へ転職 。統括本部にてさらなる高度な方法論を学ぶべく身を置きましたが、彼を待っていたのは「Salesforce本国内に革新的な方法論があるわけではなく、自分たちがスタディスト時代に我流で必死に構築してきた仕組みの方が、むしろ圧倒的に洗練されていた」という事実への気づきでした 。ここで須藤さんは、自らが現場で試行錯誤し磨き上げてきたノウハウが、市場においてきわめて高い再現性と価値を持っていることを確信します 。
■ 独立、社名「goenz」に込めた意味:偶然のご縁を科学する
Salesforce在籍中、知人の経営者向けにボランティアベース(無償)でカスタマーサクセスや営業組織構築の相談・壁打ちを開始したところ、瞬く間に口コミが広がり、待機列(行列)ができるほどの需要が発生します 。副業ながら顧客数が拡大し、期待される収入が会社の給与を超えたこと、そして確固たる顧客基盤という事実があったことから、満を持して独立を果たしました 。
社名である「goenz(ゴエンズ)」には、彼の人生哲学が凝縮されています。
- goen(ご縁): スタディストや私(杉浦)との出会いを含め、自らの人生を大きく変え、支えてくれた人々との「ご縁」を何よりも大切にしたいという想い 。
- science(サイエンス): 大切なご縁やビジネスの成功を、単なる「偶然」や「気合と根性」で終わらせず、再現可能な力として科学(サイエンス)したいという想い。
- Z(複数形): 経営者もメンバーも、関わるすべての人がワクワクしながら活躍し、たくさんの大切なご縁とサクセスを複数生み出していきたいという願い 。
現在は、現場主義・事実主義(ファクト)を徹底し、大企業や急成長スタートアップの現場で愚直に磨き上げてきたノウハウをもとに、既存顧客との関係性を最重視しながら独自のカスタマーサクセスコンサルティングを提供しています 。
なぜ「goenz(ゴエンズ)」をつくったのか?須藤さんが作成くださった文章を記載します。(素晴らしい!)
私はこれまで、日本の伝統的な大企業、急成長するスタートアップ、世界トップクラスの外資SaaS企業、そして大学発スタートアップを支援する特任准教授と、多彩なキャリアを重ねてきました。立場も、業界も、企業の規模もまるで違う現場です。
しかし、そのどこでも、私は同じ問題に出会いました。
商品やサービスは良い。決して競合に負けていない。なのに、売れない。リピートされない。
売上の停滞は、企業にとって死活問題です。経営者や事業責任者の方々が、この問題に深く苦しんでいる姿を、私は何度も目の当たりにしてきました。
もちろん多くの企業があらゆる手を打とうとします。けれど、その打ち手はしばしば次のような状態に陥ります。
・気合と根性という精神論でカバーしようとする。
・ごく一部のハイパフォーマーに依存する。
・勝ちパターンが定義されず、属人化したままになる。
・キャンペーン頼みの、その場しのぎの単発受注を繰り返す。
そして現場は「やらされ感」を募らせ、個人も組織も士気を落としていく—。
私は、これを心から「もったいない」と感じてきました。
この問題と向き合う中で、私の軸になっているのが「カスタマーサクセス」という概念であり戦略です。私がこれに出会ったのは、急成長するスタートアップに身を置いていた頃でした。当時の日本には、参考にできる教科書も、先行事例もほとんどありませんでした。なので、私は海外SaaS企業の記事や書籍を読み漁り、独学で学びました。学んだことを現場で試し、時には失敗し、その繰り返しの中から、カスタマーサクセスの本質を少しずつ掴んでいきました。
カスタマーサクセスとは、ひとことで言えば「売って終わりではなく、お客様が、その商品やサービスを活用して成功を勝ち取っている状態(お客様が本当に成果を得られる状態)にまで責任を持つ」という考え方です。「売れない/リピートされない」問題の根っこも、突き詰めればここにあります。お客様の成功を起点に設計されていない事業のあり方は、どこかで必ず行き詰まる。私は、そう確信するようになりました。
その後、立場を変えながらも、お客様に誠実に向き合い、この知見を愚直に磨き続けてきました。その積み重ねが、今の私のコンサルティングの背骨になっています。
そうして私は気づきました。「売れない/リピートされない」問題の多くは、ほんのちょっとした工夫で解決できる、と。私は自分自身の失敗も含めた経験の中から、その「工夫」を再現可能な形に体系化してきました。
気合と根性はもちろん大事ですが、それだけに依存するのではなく、誰もが再現できる仕組みで成果が出る。一部の天才に依存せず、普通の現場が当たり前に売れるようになる。営業が「やらされ仕事」ではなく、誇りを持てる仕事になる。けれど、これらはまだ通過点に過ぎません。
私が本当に実現したいのは、その先です。私のお客様の、さらにその先のお客様にまで、価値がしっかりと届く仕組みをつくること。それを実践できる人材を育てること。その結果として、お客様の売上が増え、事業が成長し、その会社の経営者も従業員も、イキイキと生きられるようになること。
私のお客様のお客様の成功なくして、私のお客様の成功はありえない。これこそ、カスタマーサクセスという思想がたどり着く、ひとつの真実だと私は信じています。
社名の「goenz」には、この想いを込めました。私は幼い頃から「ご縁」に助けられ、今の自分があるのは、出会えた皆さんのおかげだと心から思っています。けれど「ご縁」は、偶然のもの、再現できないものと思われがちです。私は、それを簡単には諦めたくありませんでした。私を助けてくれた「ご縁」を、科学(サイエンス)して再現し、たくさん生み出すことができたら—。そうして「ご縁(goen)」と「サイエンス」と「たくさん(複数形のz)」を掛け合わせ、goenzは生まれました。
ご縁を科学し、顧客の成功を再現する。その積み重ねが、やがて成功の連鎖を生んでいく。
顧客の成功と、事業成長が連鎖する仕組みを。 それが、goenzの信念です。
この思いはそのまま文字が良いと思いました。たくさんの会社のお役立ちになりますね。


■ 未来へのビジョン:ライスワークから、長崎への地域還元というライフワークへ
現在のカスタマーサクセスや既存顧客営業の仕組み化、組織作りのコンサルティングは、須藤さんにとって生活の基盤を支える「ライスワーク」として、非常に高い満足度と成果を上げています 。そして、その満たされたエネルギーを原動力に、彼は今、自らの故郷である長崎県への地域還元を「ライフワーク」と位置づけ、次なる未来の構想へと動き出しています 。
具体的には、実家のルーツでもある焼き鳥店の長崎での開業、現地の若者や介護・障がい等の様々な事情により地域を離れられない人々に武器(スキル)を提供する「AIスクール(ビジネス基礎力を高めるスクール)」の開校 。さらに、長崎県立大学と佐世保の市街地中心地が物理的に分断されているという地域の課題を解決するため、若者をダイレクトに繋ぐ「電動バイクのシェアリングサービス」の開発など、構想は多岐にわたります 。
これらを具現化する母体として、長崎で「株式会社ヒカゲン(火加減)」の立ち上げを計画しています 。「地方において火力を強すぎても嫌がられ、弱すぎても火がつかない。焼き鳥の焼き加減と同じように、良い安売りの『火加減』で地域を支援していきたい」と語る須藤さん 。
大企業とスタートアップの双方の力学を現場で知り尽くし、ご縁を科学し続ける須藤さんが、これから長崎、そして日本中の会社、経営者、現場にどのような新しい風を吹き込んでいくのか、今後の活躍から目が離せません 。

【2023年平田牧場ツアーにも】
■ 須藤さんにコメントをいただきました
杉浦さん、今回はこのような素晴らしい機会をいただき、誠にありがとうございました!
杉浦さんとは、三井住友海上火災保険時代からご一緒させていただいておりますが、杉浦さんが1月に退職された同じ年の3月に私も追いかけるように退職しました。退職後、最初にご挨拶に伺ったのが杉浦さんです。当時は、独立するつもりなどなく、ただただ素直に近況のご報告をしようとお会いいただきました。
ただ、そのご縁がきっかけとなり、私のビジネス人生の転機となるスタディスト社(カスタマーサクセス)とのご縁や、たくさんの尊敬できる経営者仲間とのご縁が繋がっていきました。
これは私の勝手な想像ですが、杉浦さんは、私の本質的に引っ込み思案な性格や、(無用に)慎重な姿勢を見抜いて、少しずつ、でも確実に起業への道筋を描いてくださっていたのではないかと考えています。
私が今、カスタマーサクセスをベースにした既存顧客営業の仕組みづくりや人材育成で起業できたのも杉浦さんや素晴らしい経営者の皆様とのご縁のおかげです。
「誠実」「現場主義」「感謝」は私が大事にしている言葉であり考え方です。これらを常に最前線で実践し、全力で体現されているの杉浦さんの姿をみて、いつも「自分ももっと頑張らねば!!」と元気をいただいております。
既存顧客営業に関するご支援はもちろんのこと、長崎をはじめとする地方を元気にする取り組みをどんどん推進していきたいと思います!これからも日本全国ツアーをはじめ、いろいろな場面でご一緒させていただけることをとても楽しみにしております!!いつもありがとうございます!!
楽しいこと、楽しみ満載です!須藤さん!この度のインタビュー有り難うございました!