難有ればこそ有り難し、本気で向き合っている人と話す。

ー杉浦佳浩

難有ればこそ有り難し、本気で向き合っている人と話す。


2022年 10月 31日

【今週の自戒】

難有ればこそ有り難し、本気で向き合っている人と話す。
近年大きなニュースになった
ある会社の事業再生のお話。
厳しい、困難だらけ、茨の道を
誰が引っ張るのか?と思っていましたら
楽しい会話のイメージしかないAさんが
社長就任という事実を後日知りました。
まさに火中の栗を拾う、
真っ赤に燃えた栗を素手で触るようなレベル
事業を再生するのか、できるのか
頑張っている社員をどうするのか
たくさんの問題、壁に当たりながら
社長就任から数ヶ月後に出した決断、
事業分割譲渡と一部廃業。
Aさんすごいなと思ったのは
廃業部分の社員全員との面談と
再就職先のお世話。
ここまで就職話に関わったのは
人生で初めてと笑顔で話してくださいました。
事業再生を上手くやる人は
自分以上にたくさんいると思う、
しかし、
きちんとやり切る人は自分以外にいない
そう思ってお引き受けしました。と
この重責への関わりについての
意思決定を教えてくださいました。
当たり前なんて無いはず
自分の小ささを顧みて
有り難しの気持ちで、
今週も
よろしくお願い申し上げます。
【「当たり前」病】
諏訪中央病院名誉医院長、鎌田實(みのる)氏の心に響く言葉より…兵庫県の中東部、丹波市と隣の篠山(ささやま)市からなる丹波地域の人口は、約11万6千人。
3つの基幹病院があり、7人の小児科医が働いていた。
3病院で小児科輪番制をしき、夜間救急外来を分担していた。医師不足と経費削減のあおりを受け、1つの病院の小児科がつぶれた。
もう1つの病院も、小児科医が1人になった。
輪番制は機能しなくなった。

丹波市にある県立柏原(かいばら)病院でも、小児科医が3人から2人に減っていた。
さらに、県の人事で、うち1人が院長に就任することになった。
小児科医が実質、自分1人になると聞いたとき、和久祥三は、もう限界だと絶望したという。
当時すでに、月に7日以上も宿直や地域の輪番があり、睡眠不足が続いていた。
心身ともに疲れ切っていた。

このうえ、現場で働く人間がまた減ったら、丹波地域の小児1万8千人の命を、自分と別の病院の医師、2人だけであずかることになる。
こんな体制で勤務を続けていたら、医療事故を起こしてしまう。
続けるほうが無責任じゃないか…。
悩んだ末に、和久は辞職を宣言する。

和久医師が辞職をすると耳にし、丹波新聞の記者、足立智和が、医療キャンペーンをはった。
子育て中の女性たちの声も記事にしようと、座談会を開いた。
その座談会に軽い気持ちで参加したお母さんたちは、足立記者の話を聞いて驚いた。
お医者さんは、そんなに追いつめられているのか。
このままでは地域から小児科がなくなってしまうかもしれない…。

座談会の翌日、出席者のうちの7人が立ち上がる。
「県立柏原病院の小児科を守る会」を発足。
県知事に小児科医派遣を求める署名活動をスタートしたのだ。
署名は2か月足らずで丹波地域の人口の約半分、5万5千人に達した。

しかし、「医師不足は丹波地域だけではない。もっと困っている地域があるから、あなたがたのところは来年以降になる」と県から告げられた。
お母さんたちはあきらめなかった。
行政は頼りにならないと痛感したことで、逆に覚悟が決まった。

また、集まって知恵を絞り、スローガンを決めた。
「コンビニ受診を控えよう」「かかりつけ医をもとう」「お医者さんに感謝の気持ちを伝えよう」の3つだ。
「コンビニ受診」とは、軽症なのにコンビニに行くような感覚で夜間や休日に救急外来を利用すること。
全国的に見て、診療時間外に小児救急を訪れる患者の9割が、緊急度の低い軽症者だといわれている。
そのことを足立記者から聞き、ここから変えていかなければと思ったという。

守る会のメンバーに和久医師が会ったのは、会の発足から4ヶ月ほどが過ぎてから。
「辞めないでください」と一方的に懇願されると思っていたら、そうじゃなかった。
ただただ和久の体のことを心配し、「今まで診てくれてありがとう」と言ってくれた。

病院の中に“ありがとうポスト”を設置させてほしいと申し出てもくれた。
診察を受けに来た子供や、そのお母さんたちからのメッセージで、ポストはたちまちいっぱいになった。
なかには、こんな手紙もあった。

「診てもらって当たり前と思っていた自分が恥ずかしい。今まで子供の命を守っていただき、ありがとうございました」
子供を外科医や内科医ではなく、小児科医に診てもらうのは、自分たちの権利だと思っていた。
たとえ、それが夜中でも、診てもらえて当たり前と思っていた。

日本じゅうが、この「当たり前」に空気感染していた。
土俵際で柏原病院の崩壊を食い止めたのは、「ありがとう」のひと言だった。

和久医師は、「何度泣いたかわからない」と言う。
そして、辞職を思いとどまった。
患者さんの感謝が、消耗の極みにあった医師の心を支えた。
過酷な勤務を続けていく力を与えてくれた。

『空気は読まない』集英社

今、多くの人は、「当たり前」病、におかされている。
病院の先生は、「診てくれて当たり前」「治してくれるのが当たり前」「夜中に診てくれるのが当たり前」と。
救急車は、「呼んだらすぐに来てくれるのが当たり前」「夜中でも来てくれるのが当たり前」と。
学校の先生は、「子供にちゃんと教えるのが当たり前」「我が子をしっかり見てくれるのが当たり前」「しつけ教育をしてくれるのが当たり前」と。

そして、あげくの果てには…
病院では「モンスターペイシェント」という理不尽な要求やクレームをつけ、暴言や暴力、迷惑行為をはたらく患者やその家族が生まれ、学校では「モンスターペアレント」が発生する。
昨今では「モンスタークレーマー」という、飲食店やコンビニや店舗などで、大声で怒鳴ったり、脅したり、不当に責めたりする顧客も増えている。

モンスターの特徴は、「自己中心的」「メンタルが不安定」「承認欲求が強すぎる」「過剰な要求」「理不尽」「依存体質」等々。
そのすべてのタイプにおいて、「感謝の気持ち」がないということ。

「当たり前」の反対は「ありがとう」だと言われる。
どんなときも…
感謝の気持ちを忘れない人でありたい。

上記の【「当たり前」病】については人の心に灯をともすより引用しています。